我が社は目標管理と業績評価が連動しているのですが、本当に頑張った人よりシートをうまく書いた人の評価が高くなっているような気がします。これはおかしいのではないでしょうか?
シートをうまく書いている人には、2つのタイプの人が想定できます。
1つ目のタイプは、自分が担当している仕事の状況をよく分析し、自分が取り組むべき役割や目標を深く考え、整理できている人です。このタイプの人は仕事の
見通しづけができているわけですから、遮二無二努力していないように見えても高い成果をあげ、結果として評価がよくなるのも納得できるところです。
問題はもう1つのタイプの人です。実際の仕事はそれほどやっていないにも関わらず、シート上だけをきれいに書いて、悪くいえばごまかしている「要領がい
い」タイプの人です。
目標管理における業績評価で、シートの書き方を操作してよい評価を得るには2つの方策があります。
1つ目は楽に達成できる目標だけを取りあげ、目標をできるだけ低く設定することです。そうすれば達成度は相対的に高くなります。
2つ目は、自己評価のときに事実と異なる情報を提示して実際より高い達成度にしたり、厳しい状況にあったという情報を羅列して難易度、困難度などの加点を主張することです。
シートの書き方1つで評価が甘くならないようにするためには、上述した2つの情報操作に、評価者が惑わされないことです。そのためにまず評価段階では、評価者自身が事実をきちんと押えることが肝心です。それができれば自己評価がどうあれ、厳正な評価を下すことが可能となります。同様に目標設定段階では、その目標が本当に妥当なものかどうかをきちんと吟味し、目標が適正な評価基準となるようにしておかなければなりません。
特に、目標設定段階で甘い目標が承認されてしまっていると、期末に高い達成率を得た後で「目標が低かったから」と厳しい評価を加えるのは困難です。本人にしてみれば「約束が違う」と感じ、評価者に不信感を持つでしょう。
こうしてみても、目標設定は非常に重要だということがわかります。 このような問題を回避するには、いくつかの工夫が必要です。
1つ目は個人目標の設定の前に、時間をかけて目標設定ミーティングを行なうことです。その場で職場状況を十分理解させ、誰がどの程度の役割や目標を担うべきか、その中で自分はどの程度期待されているかを自覚させます。こうして職場メンバーがお互いの期待や仕事の状況が見えるようにすることで、相互牽制機能が働くようになり、安易に楽な目標がつくれなくなります。
2つ目は制度的な工夫になりますが、目標設定後の期中面談を設定し、そこで目標の修正を行なえるようにすることです。1〜2ヶ月を経過したところで目標が
低すぎると判断された場合は、目標の上方修正を促します。
3つ目は評価制度の工夫です。業績評価の他に、能力、プロセス、行動、役割遂行度など、結果以外の側面を見る評価を設けます。仮に業績評価の方では運良く高い評価を得られたとしても、もう1つの評価ではチャレンジ性、貢献意欲、仕事の質的なレベルなどの項目で、厳しい評価となるようにしておきます。
そして最後は、次回の目標設定時に今回の状況を反映させていくことです。つまり、今回は目標が低すぎたことで高い評価となったことはしかたなしと割り切ったうえで、次回は同じことはさせない、2回続けてごまかしはきかないように指導していくという考え方です。
この最後の方策は、中期的に是正していこうとするものですから、解決策になっていないと感じられるかもしれません。評価は毎回毎回公正であるべきだと思い
ます。しかし、目標管理をやっていなかったときには、こういう要領のよい人がいつも得をしていたのかもしれません。目標管理を行なうことで、そうした不公
平感を少しずつ是正していく機能は働いていくはずだと思います。