貴社ホームページの 「職場の管理レベル診断」の中に「5.会議で決まったこと、通達などが、なかなか徹底されない」「22.何かの取り組みをはじめても、いつの間にか、なし崩しになることがある」という設問文があります。これらは何かの取り組みをした結果改善するのだと思われますが、具体的な例があれば教えてください 。
この2つは、5Sができていない職場で見られる傾向として、チェックリストに加えさせていただきました。裏返せば5Sに取り組んでいくと次第に改善
されていく傾向があるものと位置づけております。
つまり、ご質問の「何かの取り組み」は「5S活動への取り組み」となるわけですが、ここではこれらが5S活動とどのように関連しているのかについて解説さ
せていただこうと思います。
[チェックリスト設問文]
このような状態が発生してしまうと、「風土が問題」という指摘がなされます。風土と言ってしまうとかなり漠然としてしまいますが、5S活動に取 り組んでいくと、この風土の中のある側面には少なからず影響が出てきます。
5Sで対象としている整理、整頓などは極めて当たり前のことであり、それをやること自体は決して難しくはありません。毎日当たり前にやっていれ
ば、決して乱れることがないはずです。
ところが、当たり前とわかっていながらも、やってもやらなくても目先の業務に支障がないこともあり、つい先送りしてしまいがちなことでもあります。これを
繰り返していると、面倒なことは先送りしておこうという習慣が身に付いてしまいます。
そればかりか、当たり前で簡単だったはずの整理、整頓などが、膨大な時間を必要とする仕事に化けてしまいます。最初は、明日やればいいやとか、その気にな
ればいつでもできるとか思っていたのに、いざやろうと思っても簡単にはできない状態になってしまいます。
こうなると、やって当たり前のことほど言い訳や屁理屈が増えてきます。やろうと思っても簡単ではなくなっているわけですから、言い訳で自己弁護するしか手
がないわけです。
一方監督する立場の人も、言い訳だとわかっていても物理的にできないものは認めざるを得ません。その結果、言い訳が通ってしまう組織となってしまいます。
会議で決められることや通達で出されることは、日常の整理、整頓などよりは難しいものが少なくありません。またこれらは「やって当たり前」とい
うより「やらざるを得ない」ことであるはずですから、当然みんなやるはずです。
ところが、物事を先送りする習慣がついた組織や言い訳がまかり通る組織では、そうはいきません。5Sすら徹底できてないわけですから、難しいことや面倒な
ことが徹底されるはずがないわけです。
これまでやっていなかった職場で本格的に5S活動に取り組むとなると、全てを一気にやれませんので、計画を立て、1つひとつ着実にやっていく必
要が出てきます。
忙しいときには5Sなど後回しにしたいところですが、それを許すと5Sの状態が後退してしまい、計画が前に進まなくなってしまいます。そのため、5Sでは
無理な計画を立てる必要はありませんが、決めたことは必ずやるということを徹底せざるを得ません。
こうして5S活動に取り組んでいるうちに、職場内にある種の規律が芽生えはじめます。それによって、このような風土そのものの改善にもつながっていくと考
えられます。
さて、風土という漠然とした問題から取り上げてしまいましたが、もう少し具体的に着目すべき点があります。それは、何かをやろうとするときの時
間と工数が、想定と実際でズレるという問題です。
会議などでは最初からできないことを決めているわけではなく「このくらいはできるだろう」「これはこのくらいの時間や工数をかければできるだろう」という
判断のもと決定されているはずです。
ところが実際にやってみると、想定以上に時間や工数がかかってしまうことがあります。取り組みの過程で多くのムダが発生してしまうためです。
例えば段取り時間が予定よりかかったり、もの探しの時間が発生したりすること。打合せミスでやり直しが起きたり、共同作業者とのタイミングが合わず手待ち
が発生してしまうことなどです。
これら1つひとつは大したことなくても、ムダがムダを呼び、すごく大きなロスとなってしまいます。
1つのことが予定より遅れたり完成できないため、仕掛かり中の案件が増えてしまいます。そのうち次の案件・テーマが入ってきますので、前の案件はうやむや
にせざるを得なくなってしまいます。
5Sができてない職場ほどこのような傾向が激しく現れます。
もの探しの時間や、打ち合わせたことを誰かが守らないということが多かったりで、悪循環を繰り返すためです。
5Sは単にきれいにするという活動ではなく、職場の中からムダを無くしていくことに通じる活動です。
大きな改善とはいきませんが、まさしくムダな物、ムダなスペース、ムダな時間を無くしていきます。
風土という漠然としたことだけでなく、何かを確実にやり遂げていこうとするとき、具体的なところでも効果につながっていると考えることができます。
いろいろな改善に真剣に取り組んできた企業では「最後は結局5Sの差」とか「5Sに始まり5Sに終わる」という人が多くいます。
つまり、5Sはいろいろな改善の基礎となる活動であり、難しい課題に取り組もうとするほど5Sの状態に影響されるというわけです。
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