「5Sは儲かる」という言葉をよく耳にしますが、「儲かる」部分はなかなか目で確認できません。 いろいろな部署があり競わせているのですが、金額で競わせないとやる気が少ないように感じています。
よい方法はあるのでしょうか?
5Sは儲かるか?
最初に、5Sが儲かるかどうかという点について弊社の見解を述べたいと思います。
「5Sは儲かる」という人と「5Sが直接金銭的成果に結びつくわけでない」という人がいます。この両者は言い回しこそ違いますが、実は同じようなことを
言っているとも言えます。このように言い方が分かれてくるところが5Sという活動の特質かもしれません。
まず、整理整頓ができてきますと、'もの'を探すという時間が少なくなります。
その時間をつなぎあわせて、仮に1人一日平均5分だけ'もの'を探している時間を短縮できたとしたら、一カ月20日稼働として100分/月、10人の従業
員がいたら1000分、つまり一カ月月当り16時間40分の人件費コストが削減できた計算になります。
しかし、実際に人件費が減るわけではありません。儲かったというためには、削減できた時間を、付加価値を生み出す時間に使う必要があります。そしてその時
間価値が、整理整頓を維持するためにかかる時間コストより大きかった分だけが本当に儲かったといえる部分となります。
5Sに取り組む前がよほどひどかった場合は別として、整理整頓が進んで便利になったというだけでは、さほど大きな経済的効果は得られないでしょ
う。
しかし、整理整頓が進んでくるとスペースに余裕が生まれます。そのスペースを有効に使ったり、レイアウトを組み替えたりできると大きな効果が生まれます。
また、修理部品や資材の管理がきちんとできるようになり、必要なものを必要量以上に持たないようになると、かなりのコストメリットが生まれます。さらに、
整理整頓が進むにつれ、現場での段取り改善が進むようになり、設備の稼働率が向上し始めたという例もあります。
清掃も同様です。床や設備周辺を常にきれいにしようとすると多くの労力を必要とし、これまでなかったコストが新たに発生するかもしれません。し
かし、清掃が常に行き届くようになると、品質トラブルが減少し、設備の故障停止の頻度も減ってくるという傾向が見られます。
つまり、品質トラブルや故障によって発生する膨大なコストを、清掃によって回避できたと言い換えることができます。
これらは、5Sのみによってもたらされた効果とは言えないかもしれません。しかし、5Sに取り組むことによって、並行して進めている管理活動や
改善活動との相乗効果がもたらされることは珍しいことではありません。
つまり、5Sを直接金銭的成果として捉えるのは難しいけれど、総合的に見るとずいぶん儲かると言えるのだと思います。
5Sの儲けを把握するには?
さて、では質問の趣旨である、その儲けを把握する方法について考えてみたいと思います。これに関しては、どの程度の正確さで儲けを算出する必要
があるかという点が1つのポイントだと感じます。
もし正確な数字を算定したいということであれば、現場改善の効果計算で行なうような経済性評価の算定式を用いる方法もあります。これによってきめ細かく
データ取りし、厳密な数字をはじくこともできないことはないでしょう。
しかし、5S活動を活性化させる、という目的からすると、それほど正確な数字は必要ないだろうと思えます。
そこで、5S活動で想定できるいくつかの改善項目に対して、単純に単価設定し、その単価と改善数量を掛け合わせることによって暫定的な儲けをはじく、とい
うやり方ではいかがでしょうか。
例えば、まず3カ月とか半年とかの期間を設定します。そしてその期間を前提に改善単価を割り出します。例えばスペースの確保については、1平米当りいく
ら、キャビネット1段当りいくら、と設定します。時間短縮に関しては、1時間当りいくらと設定します。
部品在庫の削減や稼働率の向上など、直接金額で計算できるものはその数字を用いてもよいでしょう。5S以外の改善活動も含めた複合的な成果をみたい場合
は、改善内容によって一定の案分比率を設定してもよいかと思います。
上記はいわば、改善ポイント制のような方法で、そのポイントの設定を模擬的な金額で表しただけとも言えます。ポイントの設定や計算方法は複雑に
せず、できるだけシンプルで誰もがわかりやすくしてやるとうまく活用されるのではないかと思います。
もちろん、ここで算定される金額は実質的な儲けを表しているわけではありませんし、誤差もかなり大きくなるはずです。
しかし、誤差はあっても、金額で表すことによりコスト意識が芽生えますし、貢献できているという実感も持てるようになるのではないでしょうか。
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