ナビゲートのロゴ
ナビゲート通信は主な更新情報をお届けするメールマガジンです。ご登録はこちらから。

下記はページ内を移動するためのリンクです。

現在位置

 ホーム > 正気堂々 > 目次INDEX > No.6-90

構造的課題

更新 2013.08.15(作成 2013.08.15)

| ←BACK | INDEX | NEXT→ |

第6章 正気堂々 90.構造的課題

「問題ってなんだ」
新田は、何が飛び出すかと身体を引いた。
「厚生年金基金が関係会社を含めたグループ加入になっておりますからわが社だけがポイント化しても厚生省の認可がおりません」
「うーん。転籍したとき総合型に切り替えたからな。それでどうしたらいい」
新田は経理、財務を管掌し、基金の理事長をしているから基金のことにも詳しい。特に基金の財政には神経を使っている。運用のつまずきは積み立て不足に直結する問題だからだ。
「はい。まず、関係会社も含めたグループ全体でポイント化しなければならないということが1点です」
「うん」
「そのためには、グループ全体でポイント化が可能な人事制度にしなければなりません。その上でグループ全体をポイント制にするというステップになります」
「うん。なるほど」
「私は資格をポイントの根拠にしようと思っていますので、特に資格制度をわが社と整合性を取れるようにしなければなりません。」
「資格だけでポイント化するのか」
「はい。その年の評価だとか、役職位だとかいろいろ考え方もあるようですが、資格が一番いいように思います」
「なぜだ。評価も職位もあっていいじゃないか」
「考え方としてはありなんですが、それぞれに問題があります。例えば、評価をポイント化するとしますと、若手のAと部長のAと同じかということになります。評価制度ではAは優秀という定義で統一していますから差をつけるとしたらおかしくなります」
「いいじゃないか。部長のAは100ポイント、平のAは30ポイントにしちゃだめなのか」
「ダメというよりも、それは評価の要素ではなく役職位の要素ポイントになると思います」
「あーそうか。なるほどのー」新田はやっと気づいたようだ。
「それに、最高評価の人には適当なポイントをやることができますが、最下位の人にはどんなポイントをあげたらいいか見当がつきません」
「いいじゃないか。適当なポイントをやれば」
「しかしですよ、人事評価が最低です、賃金も下がりますって人に退職金だけ何らかのポイントをやるっておかしくないですか」
「あー、それもそうだな」
「それから、役職位をポイント化しますと一生平の人には一生ポイントがつかなくなりますし、今回の新人事制度では役職位もドラスティックに変動しますから極めて不安定なものになります」
「なるほどのう」
「それに30年、40年先の支給に対して毎年の評価や役職位を反映させるとなるとなんだかミミッチイというか、セセコマシイ考えのようで会社が安く見られそうに思います」
「……」
新田はそんな自分の考えが嫌だったのと、そこを遠慮なく突いてくる平田の指摘にちょっと顔を歪めた。しかし、それで新田は自分の考えを深化させている。
「結局、退職金って最終的にはある程度の金額を出さなくてはならないじゃないですか。そうなると年令とか勤続とか、ある程度安定した根拠のポイントが要ります。それで資格が一番いいんじゃないかなと考えます。全ての要素がここに集約されるように思います」
「なるほど。それもそうだな」
新田は、納得するように一生懸命自分に言い聞かせているようだった。恐らく自分自身の構想やアイデアもあったのであろうが、平田の論拠の前に軌道修正をしているのであろう。
「そこで、資格にする根拠はなんだ」
「はい。どっちにしても退職金はある程度の額を積み立てなければなりませんが、資格ポイントは会社も個人も道筋が見えやすいということがあります」
「うん。なるほど」
「それから、評価も職位もその人の実力や貢献を表しますが、結局それらは資格に収斂します。だから資格がいいんじゃないかと思います」
「よし、わかった。それじゃそれをすると関係会社もポイント化できるのか」
新田は頭がいい。問題の本題を忘れることはない。追及は続いた。
「基金とすれば一つですから、片方で実力主義や成果主義のポイント化をやって片方で年功的運用ポイントでは認可基準に引っ掛かります」
「そうだろうな。しかし、関係会社は技術集団的なところがあるから成果主義とか実力主義ばかりを強調するのは問題がないか。関係会社はその辺も考慮せんとな」
「仰るとおりです。その辺は中に入って研究しなければわかりません。それで少し時間がいるかなと」
「うん、それでだな。俺は退職金も年令ポイントと資格ポイントの二階建てにしたらどうかと思っている。どっちにしても何がしかのポイントがいるわけで、ある程度安定した部分がなければならないのなら年令ポイントを付けてはどうか」
「あー。なるほどですね。いつか仰ってた『正反対の正』の理論ですね」
「そうだ。退職金はどうしても老後の生活費的性格は拭えない。賃金も生活給として年令給を支給しているのだから、退職金も年令ポイントがあってもいいじゃないか。およそ半分くらいが年令で、あとが資格ポイントではどうだ」
「はい。それは研究の価値がありますが……。差があまりつかなくなるんじゃないかなー」最後は独り言のように目を細めて想像を働かせた。
頭の中はフル回転し、ポイント構成のラフスケッチを試みていた。
“モデル2800万円として40年間の積み立て期間とすると年平均70ポイント。年令ポイントを30にしたら資格が40となる。これは平均者の40年間の平均ポイントであるから、Pコース1級を5ポイントくらいから始めるとEコース4級くらいになると100ポイントは出せるかな。結構差がつけられるな。それで部長クラスが3000万円に乗るかどうかだな”
部長クラスの3000万円は確保したいと考えていた。
「それはお前の腕次第だろう」
新田もそのあたりを見透かしたように畳み掛けてきた。
「はい。わかりました。理由も要りますし考え方として整理したいと思います」
「うん。そうしてくれ」

「正気堂々」についてご意見をお聞かせください

▲このページの先頭へ

お問い合わせ・ご連絡先
Copyright © 1999 - Navigate, Inc. All Rights Reserved.