EARTH DAY TOKYO 2010 考える編
夕方7時を回っても、アースデイコンサートのステージでは演奏が続いています。人だかりの彼方を背伸びして窺いつつ、私はアースデイ会場をあとにしました。
楽しかったものの、帰り道、何かが頭に引っかかっている。原宿の街を歩きながら、アースデイの印象を再検討してみました。
<NPOビレッジ>
私はアースデイキッチンに向かう前に、NPOビレッジもひととおり見て回りました。カラフルなテントが列をなし、雑貨や食品の販売、パネルの掲示などが行われています。
記念になるようなかわいい雑貨があれば買いたかったのですが、じつをいうと、ほしいものは何も見つかりませんでした。
商品として並んでいるのは、オーガニックコットンのワンピース、草木染めの足袋、フェルトのエコバッグ、ビーズをつなげたアクセサリー、木彫りの人形......どこを見ても和風またはエスニック調の品々です。
正直、花柄やレースやリボンを愛する私の好みではありません。その私の隣では、遊牧民と見まがうような全身アースカラーにバックパックを背負って水筒を提げた男女が、直輸入の麻のストールを見て「いいねー」と言ったりしています。たしかに、彼らにはぴったり似合っています。
うーん? でも、私はやっぱり、自分の好きなものを変えられそうにない。
変えないままで、環境への負荷を減らしていくのが理想です。
そもそも「エコ」が、多くの好みの中の1つ、多くのスタイルの中の1つでありつづける限り、あくまで選択肢の1つにしかならないでしょう。私が花柄を断念して麻布を身にまとっても空しく、誰もが同じようにするとは思えません。むしろ変えていかなければならないのは、あらゆる好みやスタイルの前提となるほとんど無意識に近いような土台の部分だと思います。アースカラーの服や雑貨たちは、そういう意味でごく表面的なものに過ぎないと思ってしまいました。
「EARTH DAY TOKYO 2010 ?悩ましい編?」で厚切りソーセージと野菜まんじゅうのことを書きましたが、ここでも2つの立場に通底するものを探す難しさを感じました。
厚切りソーセージと野菜まんじゅうは同じようにアースデイキッチンに並んでいながら、ほとんど相反する主義に則ってつくられたものです。
厚切りソーセージは食の安全・安心を追求しています。自然に近い飼育環境で非遺伝子組み換えの飼料を与えて大切に育てた豚、それをもとに保存料・合成着色料を使わずにソーセージにします。当然、単価は高くなり、生産量も限られてきます。
一方で、野菜まんじゅうはベジタリアンになることをすすめます。その理由は、食肉をつくるためには大量の飼料(トウモロコシなど)が必要なうえに、CO2が排出されるから。私たちが肉を食べなければ、エサになるはずだった飼料を別のところに回せます。たとえば、より多くの人に食料を分配できるというのです。
どちらも地球・人にやさしいといったキーワードでくくられてしまいそうですが、中身をよく見ると、意見の対立に発展しても全くおかしくありません。
食の安全・安心、オーガニックやGMOフリーは、貧困・飢餓の問題とも関わっています。自分が食べる分には「オーガニックがいいし、遺伝子組み換えはイヤ」というのが自然な感情でしょうし、これを主張するNPOも多くあります。
しかし、オーガニックやGMOフリーを徹底するために食品の生産量が下がり、値段が上がるとしたら、安全な食料にアクセスできる(食べられる)のは、経済的に豊かな人たちに限られてしまいます。そしてそれ以外の人たちへの供給量は下がります。
私たちや私たちの子供は安全な食料を食べているけど、世界ではどうか? 有機栽培で十分な供給を確保できるのか? 個人の食の安全を追求するとき、全体としての食の安全はどうなっているのか? 本当はそこまで考えなければならないのでしょうが、結局私自身「安心して食べられるからオーガニックっていいわ?」というレベルで買い物をしています。
対立に発展しそうな例は、会場を探せばいくらでも見つけられそうです。
例えば、募金。
あちらこちらで募金の呼びかけを見ましたが、見方を変えれば、1つのパイの取り合いをしているとも考えられます。寄付は寄付するだけいいに決まっていますが、手元にあるお金は限られているわけです。それぞれのNPOが自分たちの問題を必死に訴えますが、募金する側は何を根拠に募金先を選べばいいのでしょうか?
もしできるなら、複数の募金の概要を踏まえたうえで、募金したい側のニーズに応じてアドバイスしてくれるコンシェルジュがいてくれたら面白かったと思います。保険を選ぶ際に、複数の会社の商品を比較するお店がありますが、あれと同じです。
こちらが「発展途上国の子供たちを支援したい」と言うと、「学校を作ったり文房具を買うための募金と、人身売買を予防するための募金と、エイズ孤児のための募金がありますね」みたいな感じですすめてくれる。「じゃあ教育がいいな」と言うと、これまでの実績と寄付の金額によってできること(千円なら文具セット50個とか)を教えてくれる。1万円と金額が決まっていれば、それをどう分配して募金するのが一番自分の希望に沿うのかを提案してくれるとか。
*ネットでは、チャリティ・プラットフォームで近い試みがされているようです。
NPOビレッジに並んだ服や雑貨、食の安全と供給、募金といった例を挙げましたが、私の引っかかりの原因は、包括的な視点の不在だと結論づけられるかもしれません。各団体が思い思いの主張を繰り広げているアースデイ。全体を俯瞰して、比較して、1つの体系を示してくれるような環境活動家がいたら、話を聞いてみたいものです。
今年は全体の半分ほどしか見られませんでしたが、ぜひ来年は朝からゆっくり、マイタッパーを持参して楽しみたいと思います。
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