メールを開くと、素敵なスパム
この数年、個人用のメールボックスを開くのがおっくうで仕方ありません。
迷惑メールの選別もすっかり怠っています。未読数は5千。これでも定期的に消去されています。もしかすると友人からの重要な連絡が「迷惑メール」に含まれているかもしれませんが、消えるにまかせて放置しています。
「迷惑メールすべてに目を通してもし何もなかったら......」「一度目を通してもまたすぐフォルダにたまるのだから......」と思うと、いっそのこと見ずに捨ててしまった方が、心穏やかでいられるというものです。
「あのころは楽しかったなあ」と、若かりし日を懐かしむ風情で、テレホーダイ時代のインターネットをよく思い出します。
私自身は中学時代からネットに親しみ、当時はどこぞの高校生・大学生と数千字にわたる長いメールを交換していました。何度も読み返して推敲し、不明な点はネットで検索する。今思うとメル友というより、文通仲間といった趣です。
知らない人から突然、あてずっぽうに送られてくる詩や私小説のメールもありました。さながら、海を経て届けられた瓶づめの手紙です。
Outlook の「受信トレイ」が太字で表示されるのを見たときの(=メール受信時)、あの総毛立つような歓喜......は多分もう二度と味わえない。同じころネットにはまっていた友人に話を振ると、やはり似たような懐古の念にとらわれているようです。
過去を美化しているかもしれませんが、迷惑メールもまれだったと記憶しています。愉快犯からウイルスが送られてくることはあっても、商用のメールや詐欺まがいのメールはほとんどありませんでした。
メールの大半が迷惑メールと化したのは5年ほど前だったと思います。迷惑メールの選別にうんざりした私は、記載されたリンクを気晴らしにクリックしてみました(皆さんは真似されませんように)。
私の「インターネットの青い春」は、このとき終わりを告げたように思います。
黒い背景にピンク文字の羅列されたページが表示され......スクロールしようとしたところ、灰色のポップアップウィンドウがオープン。
<18歳以上の方しかご利用いただけません。18歳以上ですか? はい/いいえ>
とりあえず「はい」を選択。すると再び、
<18歳以上の方しかご利用いただけません。18歳以上ですか? はい/いいえ>
<18歳以上の方しかご利用いただけません。18歳以上ですか? はい/いいえ>
<18歳以上の方しかご利用いただけません。18歳以上ですか? はい/いいえ>
何回「はい」をクリックしても表示されるポップアップ。
そのまま十数回クリックしたところ、「ジャンッ」という効果音とともに
<ご入会ありがとうございます、下記の口座に3万円振り込んでください、ご入金が確認できない場合は法的措置に訴えることもあります、こちらはあなたの個人情報を......>
やばっ!!と思い、慌ててブラウザを閉じました。
無視すればいいと頭ではわかっていても、冷や汗が出て「今すぐ抗議するべきなのだろうか? 何か打つ手はないのか?」と悩んでしまいました。ああ、好奇心は猫をも殺す!
警視庁や消費生活センターのサイトで調べたところ、上記はワンクリック詐欺に該当し、裁判所からの通達がない場合は無視するのが適切とのことでした。数年経過した現在まで、請求や恐喝のメールなどは届いていません。
いたるところに罠を張られた迷惑メール。企業においても相変わらず悩みの種のようで、今年8月に東京ビッグサイトで開催された「Security Solution 2008」展でも、「スパム対策」は1つのテーマとなっていました。会場では自動で迷惑メールを削除するソフトも何種類か紹介されていましたが、迷惑メールだけを100%選別することはやはり難しいようです。
どうせ送られてくるのなら、もう少し楽しめるものにしてくれればいいのに。
そう思っていたら、今年の春頃からロシア製の素敵な迷惑メールが届くようになりました。レトロな画像ファイルが展開されていて、スパムと思えないほど、デザインがかわいらしい。
インターネットの進化とともに提供されるサービスが変わってきたのと同じく、迷惑メールにもいずれ変化が訪れるのでしょうか。「リッチでセキュアなスパム」(?)が主流になったら、迷惑メールの選別も楽しみの1つになるかもしれませんね。
ロシアからのスパム。きれいな色にかわいいイラスト、見るだけでも楽しめます。 |