紺屋の白袴(7) 防災会議
昨年は、次々に台風が上陸し、中越地震、そして年末にはスマトラ沖の地震&津波と自然災害が相次ぐ年でした。大手企業なら防災や避難訓練もなされていると思いますが、中小だとあまり対策がなされていないようですし、大手でも責任部署だけとか形式だけというところも少なくないようです。
昨年も、台風のあととかに、笑い話にもできないような失敗談をいくつか耳にしました。
そういう弊社も例外ではありません。阪神大震災のあとやY2Kのときにはそれなりに災害対策をやったのですが、その後しだいに危機意識も薄れ、最近は少しなおざりになっていました。
そこで昨年末、半期に1度の戦略ミーティングの日に、半日を費やして防災会議をやることにしました。
付け焼き刃的に会議だけをやっても仕方ありませんので、防災担当者を決め、1カ月ほど前から準備をして会議に臨むことにしました。
事前に準備したことは、以下のあたりです。
- 備蓄品、備品の点検と更新(水、懐中電灯、ヘルメット、屋外へ脱出用器具など)
- 避難場所と緊急時の連絡先のリスト作成......web上に掲載
- 緊急時の連絡手段として、防災専用のメーリングリストの開設
- 会社の資産(特にデータ)のバックアップ・ルール
- 災害発生時の対応手順の作成(在社時、外勤時、出張時、夜間など)
- 被災者の救済、応援方法
- そして、会議当日の避難訓練の手順 などです。
ところが......
まず、担当者に指名したスタッフが20代半ばと若く、自分も知人にも被災経験がないためか、当事者意識がなく、なかなか準備が進みません。私も、たぶんそんなところだろうと思ってあえて担当者に指名したのですが、何度か打ち合せを重ねるうちに自覚も芽生え、ミーティング当日までにはしっかりと準備を整えてくれました。
ミーティングでは、その担当者にすべての説明を任せました。
しかし、今度は聞くほうの他のスタッフが関心なさそうな顔をして聞いています。一番若い担当者がせっかく一生懸命説明しているのに、質問を求めても、身のある意見はほとんど出てきません。
これまで社内で実施したミーティングでは、一番低調で、展開が難しい会議となってしまいました。
振り返ってみると、私自身もサラリーマン時代は「メンドクセーなー」としか思ってませんでしたし、避難訓練のときも忙しいからといって1人で机に残って仕事をしていたこともありました。まじめに災害を考えるのは"カッコ悪いこと"と思っていたような記憶もあります。
その私が、防災をテーマに会議を開くこと自体が不思議ですが、会社を設立した年が阪神大震災の年だったこともあり、スタッフを抱えるようになって少しずつ責任感を感じるようになってきたのかもしれません。
さて、会議の当日。
スタッフがどんなに気のない表情を見せても、私がひるむわけにはいきません。
会議の最後は避難訓練でしたが、面倒そうな顔をしているスタッフを引き連れて、地域の避難場所まで実際に行きました。そこで集合場所を決め、携帯を取り出させてその場で防災メーリングリストのアドレスを登録させました。
事前の準備に費やした工数、備品・備蓄品の更新・購入、当日の全体会議など、コストはそれなりにかかったわけですが、この会議では1円の利益も生んでいません。ですが、こういう部分にコストをかけながらスタッフの意識を高めていくことが、最終的には最もムダなコストを必要としない会社になるはずだ......と、理想論でもいいのでそう信じたいものです。