空に向かって
先日、めずらしい来客がありました。
弊社で仕事をお願いしている研修講師のお嬢さんです。その先生は女性の講師で、神戸を本拠地として活動しています。昨年暮れ、その先生と神戸で仕事の打合せをし、そのあと雑談をしている中で「今度、娘に会ってやってくれませんか?」と打診されていました。
何でも、お嬢さんが昨年突然自分で会社を起されたらしく、母親としてとても心配されているようでした。
お嬢さんはまだ20代半ばです。大学を卒業して就職したものの、その職場では思いどおりに力を発揮できず、2年ほどで退職を決意しました。最初は留学を考えたようなのですが、急に思い立ち、留学用に貯めていた資金をつぎ込んで会社を設立しました。事業領域が弊社と似ていることもあり、先生も何か少しでもヒントになることがあればと思われたのかもしれません。
私自身、独立して以来母親には心配をかけっ放しでしたので、その場では喜んでお引き受けしました。ただ先生はそう言われても、本人が私なんかに会いたいと思うか、神戸からわざわざ横浜まで来られるか、そもそもスケジュールが合うかなどと考えると、実現する確率は低いなと思っていました。
年が明け、私はずっと時間に追われる日々が続いていました。20日も過ぎ、やっと1月中の仕事に目鼻が立ってきたかなと感じはじめたとき、それを見計らうかのように電話が入りました。
先生のお嬢さんからです。アポイントを希望された日が、私が出張前の予備日として空けておいたところでしたので、うまい具合にお会いする約束ができました。
アポイントの日がやってきました。
その日は朝まで仕事をしていたので、一旦帰宅し、仮眠を取って時間に間に合うよう出てきました。せっかくおいでいただいたのに私のほうは何も準備ができてなく、頭がもうろうとした状態でお会いすることになりました。
でもポーッとして、トンチンカンな話をしてしまっては先生に申し訳ありません。気を引き締めて......と思いながら会ってみると、拍子抜けするくらい普通で、どこにでもいそうな感じの女性でした。
社会人としてのキャリアも浅いし、事業を始めて間もないので、経営のことも業界のことも知識があまり無いようです。ところが、知らないことを隠そうとはせず、また悪びれもせず、非常に素直に明るく質問してこられます。そのため何から説明してあげればいいのか、こちらが戸惑うほどでした。
会う前は、20代半ばで会社を起したと聞いていたので、バリバリのキャリアッぽい女性かもしれないと感じていました。
ビジネスで頑張っている女性は、女性ということで低く見下されることが多いためか、自分を誇張して見せようとする人がいます。人一倍努力もし、勉強もしていますが、その分だけ周囲と競い合ってしまうのかもしれません。もっと普通にできればいいのにと、気の毒に感じたこともあります。
ところが、先生のお嬢さん......ではなく、この若い事業家の女性は、非常に自然体で、好奇心をもっていろいろ吸収し、経営にチャレンジしようとしています。
時代が少しだけ、良い方向に変わろうとしているのかなとさえ感じました。
若さもあり、考え方や見通しが甘いなと感じる部分もあります。それでも自分で会社をつくり、こうして横浜まで話を聞きにこられ、そして知らない会社でも自分でどんどん営業を仕掛けていることなど、その行動力は大したもんだなと思います。若くても、さすがに経営者です。
活発に動いているからだと思いますが、話をしているうちに私が知らないことや気付いてなかったことがいくつも出てきました。そして、たくさん夢を語ってくれました。
ふと気付くと、最初はその女性社長のほうがせっせとメモをとっていたはずなのに、後半は私のほうがノートを開いてメモを取っていました。
彼女の会社は、株式会社SORAといいます。
社名のローマ字表記が解禁されたこともこのときはじめて知りました。
良い商品もあるようですし、社名のとおり、空に向かって、大きく羽ばたいてほしいものです。
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