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ランチタイムの小話より


[ち] 仕事・職場

私の肩は幅広く「ハンガーみたい」と言われる。セーターを着ていると「肩パット入ってない?」と聞かれることもある。
そうつぶやいたら、すかさず[ひ]が「えー!私はもっと張ってますよ!」という。普段あまり気がつかないが、言われてみればそうかもしれない。スーツを着るとかっこいいし、肩の出たウェンディングドレスがとても似合っていた。「骨格がこうなんで、やせてもどうにもならないんですよ?」と。それをきいた[よ]も、「私もです」と、話にのってきた。「よ」は、出掛ける時、玄関で靴を履くためちょっとよろけると、肩が壁にぶつかり、その拍子にスイッチにあたって、廊下の電気をつけてしまうことがよくあるそうだ。「電気の無駄です」と嘆く。「それに洋服とか困っちゃいますね?」話はいろいろ出てくる。 こんなに身近に「肩幅を気にしている人」が2人もいたなんて。肩幅のことで話が盛り上がることになるとは思いもしなかった。
私は背が低くて、しかも女々しい性格と自分では思っているのに、歩く姿は「ヤクザ」と言われたことがある。留学したての頃である。同じ時期に来た日本人ともまだ友達になっていなかったので、一人でうろうろすることも多かった。新しい土地に心はずませ、キリリとした気持ちで胸はって歩いていたと思う。でも寒いので手をポケットに入れていた。何げなく歩いているだけなのだが、肩幅があるせいで、肩が怒っていたに違いない。その後、私についたあだ名は「アニキ」だった。肩を大きく動かし、手はポケット、赤い靴を履き、堂々たる態度で歩いていた、というのが理由のようだ。
「私って肩幅が人より広いかも......」と、認知し始めたのは、10代の思春期だったと思う。私は化粧や衣服など、外観にはあまり興味がないのだが、自分を少しでもかわいくみせることをまだあきらめてない年齢だった。母が私の誕生日に、首元がキュっとしまった、パプスリーブのブラウスを買ってくれたことがあった。小顔で童顔な私は、かわいくお嬢様風に着こなす予定だった。しかし、である。着てみると、肩が妙に強調され、胸板も厚く見える。芝居に出てくる伯爵役の人みたいだ。鏡の前で、昔のアニメの服装を思い出し「オスカル!」と叫んでみたら、妙にそれらしく見える。花柄やボタンがかわいいブラウスだったが、それ一枚で着ることが恥ずかしくて、セーターやカーディガンを上に合わせて着ることになってしまった。
ところで、「ひ」も「よ」も普段から肩幅が目立たないように工夫をしているらしい。首周りがあいている服やVネックのセーターを着るとか、髪を肩より下に垂らすとか......。そうかぁ、だから「ひ」は、極度の寒がりなのに、首周りがあいている服を着ていたのか!涙ぐましい努力があったわけだ。私も「肩幅が狭くなる運動」というのをしていたことがあったが、3日坊主だった。
ところで、私にはなで肩で悩んでいる友人もいる。なで肩は着物が似合うから羨ましい!と思っていたのだが、彼女は彼女で非常に悩んでいるようだ。ハンドバックが肩にかけられないとか、ブラジャーが肩から落ちやすいとか。同じように服選びも工夫をしているそうだ。ラグラン袖だとなで肩が目立たないと言っていた。

肩幅のことってそんなに悩むことなの?!」と言う人もいる。自分の体について気になってしまうことは、他人には分からないが、日々悩ましい。しかし、健康であれば、まあいいか。あまり悩むのはやめよう......。

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