「山東省維坊市と高密市 番外編2」ラブラブトレイン
日本の新幹線などは進行方向に向かって席が配置されていますが、中国の長距離電車は2人か3人ずつが向き合う形になっています。 つまり4人か6人のボックス型です。
日本の乗り物と比べると、仕切りのような物がなく顔も向かい合っているので、 他の乗客を意識しないでいられることは難しいです。
例えば、向かいや隣に座る人が大きな男の人だと、ひざがぶつかったり横から占領されて狭い思いをします。 逆に、隣が早めに降りればゆったりと座ることができます。
靴が窮屈に感じるようになったら床に新聞紙を敷いて足を投げ出す人や、 向かいの椅子に載せて伸ばしたりする人もいます。
テーブルはボックスごとに窓側から小さな台が突き出す形で出ています。
日本人なら嫌がりそうなそのプライベートのなさも、人なつっこい中国人にとってはかえって 合っているようです。
もともと見知らぬ同士も(中国人が)大好きなスイカの種を一緒につまみながらいつの間にか会話が始まります。 「あなたどこまで?」というありきたりな会話から、中にはボックスの数人でトランプや将棋で盛り上がることもあります。 山東省へ行く電車では8時間トランプをし続けている人たちもいました。
さて、電車に乗るときは、多くの人が食べ物を持ってきます。お菓子やカップラーメン、ジュース、 水筒、果物などたくさんの食料を、荷物とは別にビニール袋や紙袋に入れて持ち込みます。 それは乗車すると(早い者勝ちで)テーブルの上に置かれていきます。
食べ物の中でもびっくりしたのは、蒸したり煮たりした丸ごとの鶏を食べている人が多いことです。
もともと肉が好きな中国人のこと、ソーセージやゆでた卵は常備品です。 しかし、おもむろに袋から丸ごと1羽の鶏を取り出して、ナイフで切りながら食べるというのは、 そもそも丸ごとの鶏に慣れていない私には、それを目にしただけでも肝を潰されます。
その姿を何度も目にしたので、私も北京へ戻るときに丸ごと鶏を買ってみました。 中国人は頭から爪までを1人や2人でたいらげますが、 私は恐る恐る切り離した腿にかじりついたくらいがせいぜいでした。
もう1つ面白かったのは、カップルの様子です。
今回も休暇中に旅行する若い夫婦と何組か相席になりました。 たいていの男の人は、女の人に膝枕をしてあげたり、果物をむいてあげたりします。 女の人が「疲れた」というと肩もみや脚もみをしてあげたりと、いたれりつくせりです。
日本人なら中国の女の人のわががままさにびっくりしそうですが、 それを中国の男の人は喜んでやっているようにも見えます。
中国の女の人はとてもしっかりしていて、男の人は世話をやくのが好きな印象があります。
どのカップルも羨ましいほどのラブラブな様子でした......。
中国の電車は移動時間も長く、1日がかりになることもあります。 また、中国人のコミュニケーションの取り方は日本人とは違います。
それは、困りもするし、時には面白くもあります。
プライベートはなく、新幹線のような速度も快適さもない中国の電車ですが 、日本ではできない体験ができます。