「様」も様変わり
親と話していたら、最近日本では何にでも"様"付けをすると言いだしました。
先日、電話で勧誘を受けたとき「娘に相談しないと......」と言うと、「では"娘様"によく相談なさってみてください。」と言われたそうです。
「娘様......?」そんな言い方あったのでしょうか?
お客様とはいえ「娘」に「様」をつけるのも「様憎(さまにく)」「様許り(さまばかり)」とでもいいましょうか。
「娘さん」や「お嬢様」と言うほうが、当たり障りないと思うのですが。
「お嬢様」といえば、中国にもこれによく似た言葉があります。
「小姐(シャオジエ)」昔、使用人が主人の娘に対して用いた称で、現在では未婚の女性に対する敬称として幅広く使われます。レストランや売店で女性店員に声をかけるときにも使います。
しかし、最近では水商売などで使うこともあるので、「小姐」という言葉に、敬意よりももともとの「お嬢様」という意味がかえって嫌みに感じるようになりました。
代わりに「服務員(フーウーユエン):店員さんの意味」と呼んだり、「阿姨(アーイー):おばさんの意味、女性に対して使う(わりと若い人にも)」という言い方をする人も増えました。
中国に来たばかりのころ、女の人は「小姐」と呼ばれると誰でも喜ぶのかと勘違いしていました。
「直訳すると"お嬢さん"。でもこの人は結構年なんだけど......」周りの留学生たちも疑問に感じながらも、全ての女性に対して使っていました。
もともと若い女性に対して使用する感覚はありますが、女性は「おばさん」より「お姉さん」と呼ばれる方が絶対に嬉しいだろうと思っていました。
ところがある日、けっこう年配の方に「小姐」と声をかけたとき、「あなた、私はもう"小"じゃ なくて"大"姐よ。」と笑われました。
「慇懃無礼」とまではいきませんが、敬ったつもりがかえって失礼になる言い方はたくさんあります。
日本を離れてだいぶ経ちますが、変な言葉使いで笑われてしまわないように、言葉に敏感でありたいと思います。
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「今までに様に様を付けてあがまへた娘御に」浄瑠璃、曽根崎心中より