紫陽花の思い出
梅雨本番、花屋の店先や公園、道ぞいの花壇などで満開の紫陽花を見かけます。
雨の中でもしっかりと、しっとりと大きく花を咲かせる紫陽花、不器用ながらも小さいころはよく折り紙で紫陽花を作っていましたが、そのほか、庭に咲いている紫陽花を母が小学校へ持たせてくれた思い出が浮かんできます。
私が小学生のころ、庭に咲いている花を学校に持っていき教室に飾ってもらうのは、ちょっとしたステータスでもありました。
朝、いつもの荷物の他に、新聞紙やデパートの包装紙に包んだ自家製の花束を手に持っている時点で、友人から「今日はお花を持ってきたんだね!」と言われちょっと得意顔に。
そして教室で先生に「これ、庭で咲いた花です。どうぞ」と渡し、「まあ、きれいなお花、ありがとう!」と言われたとき。背後にクラスメイトからの羨望の眼差しを感じちょっぴり照れくささもありましたが、淡々と過ごす学校生活で少しだけ輝ける貴重な一コマでした。
花を育てるのが好きだった母は、私からお願いしなくても季節ごとに様々な花を持たせてくれましたが、一番の思い出はなぜか紫陽花です。とにかく大きくて、土によって色が変わる不思議な花は、子供心にもインパクトがあったのでしょう。
最近、母の日にカーネーションではなくたまには別の花を贈ろうと、母に「どんな花が欲しい?」と聞いたところ、「紫陽花」との返答が。野生では見られない、少し変わった色の紫陽花をリクエストされたのですが、それが案外高価で、「紫陽花は無料」と思い込んでいた私は腰を抜かしたこともありました。
白髪もシワも増え、今ではすっかりおばあちゃんになった母ですが、紫陽花の思い出の中では、「今日学校へ持ってく?」と花を渡してくれた、若い頃の母のままです。
駅に向かう道沿いの紫陽花はピンク色 | 近所の公園の紫陽花は青色 |