生き返った腕時計
1年ほど前に祖母の遺品を整理したとき、タンスの奥から腕時計が見つかりました。
祖母がその腕時計を付けているのを見た記憶がありませんでしたが、母が「欲しければあげるよ」というのでもらうことにしました。
時間がすでに止まっていて壊れている可能性もあり、文字盤のフレームと金属バンドが金色で、何となく自分には似合わないような気がして、もらったもののしばらくしまったままにしていました。
最近、ふとその腕時計のことを思い出しました。
腕時計が壊れているのか、壊れていないのかだけでも調べてみようと思い、どうやって電池交換をしたらよいか腕時計を見渡していたところ、そばにいた夫が、手巻き時計であることを教えてくれました。
小さな金具をぐるぐると30回ほど巻いてみると......、チクタクチクタクと音が聞こえてきました。どうやら正常に動いているようです。まるで祖母がまた息を吹き返したような気持ちになり、少し切なくなりました。
腕時計の文字盤をよく見ると小さな文字で「SEIKO VENUS」と書かれているのが見えました。
いったいどんな時計なのかが気になり、インターネットで検索してみると、製造されたのは1960年(昭和35年)頃だということがわかりました。
昭和35年というと、母がまだ幼い頃。祖母から生活が苦しかった話をよく聞いていたので、祖母がどのようにしてこの腕時計を手にしたかは謎ですが、歴史を知るとその腕時計への愛着がさらに増します。
腕時計が壊れていないのであれば、普段自分が身に付けられるようにしたいと思い、金属バンドの部分を好みのバンドに取り換えることにしました。
近所の家電量販店に行ってみるとさまざまなバンドや革ベルトが売られていました。その中から茶色の革ベルトを購入し、手先が器用な夫に取り換えてもらいました。
リメイクした腕時計を祖母が見たらびっくりされそうですが、自分好みに変わった腕時計を大切にしたいと思います。
文字盤は、こんなデザインです。 |