かけがえのない日々
沈丁花の香りがどこからともなく漂い、甘い気持ちを届けてくれる季節になりました。桜も少しずつに咲きはじめ、春を感じさせてくれます。まだ花粉症に悩まされていない私は、この時期に散歩することがとても好きです。
さて、気がつくと3月ももうあと少しで終わりです。3月といえば皆さまは何を思い出されるでしょうか。私は卒業とそれにまつわる学生時代を思い出します。
弊社の最寄り駅である日吉駅は学校が多いためか、卒業式シーズンには学生やそのご家族で駅前がにぎわっています。私が通勤する途中にも小学校があり、卒業式に歌う歌の練習をする子供たちの元気な声がよく聞こえてきます。合唱といえば、皆で声を合わせた瞬間、体育館いっぱいに響きあうハーモニーには鳥肌が立つほど感動をしたものです。今となっては、合唱をする機会が全くなく残念に思います。
ところで先日、会社帰りにふらりと立ち寄った本屋さんで素敵な本を見つけました。雷鳥社が出している「放課後」という写真短歌集です。まず、「放課後」というタイトルにひかれました。それは学生でしか味わえないどこか秘密めいた時間に感じるからです。映し出されている写真は、教室や校庭、下駄箱、体育館......といったなんの変哲もない校舎。しかし、独特な匂いや温度を感じさせてくれる不思議な魅力があります。そして、さりげなく添えられている短歌は学生の気持ちを切なくつづっており、この本を開いた瞬間心の奥にしまっていた学生時代の思い出が鮮やかによみがえってきました。
「迷いながら ぶつかりながら 揺れながら 過ごした日々を いとしく思う」
この言葉に思わず共感してしまう方は多いのではないでしょうか。
私の学生時代を振り返るとよく迷っていたように思います。将来どう生きたいのか、やりたいことがなんなのか、当時付き合っていた恋人や友達との関係など。
学生時代は学校が好きだと実感していなかったのにもかかわらず、今となってはかけがえのない日々を過ごしてきたように感じます。
社会人になって5年目。社会にも徐々に慣れてきたころですが、この機会に本のページをめくりながら、過去の自分と向き合ってみたいと思います。
放課後 写真短歌部 加藤 千恵 (著), タクマ クニヒロ (写真) 出版社: 雷鳥社 |