運を落とす身代わり!
朝、電車を降りて自動改札機を抜けようとしたところ、「お守り」が落ちていました。
それは、和紙に包まれているタイプのもので、3X4センチほどの大きさでした。
電車が到着したばかりの改札は、後ろからどんどんと人が押し寄せてきます。先頭陣で出てきた私は、せかされるように改札機から吐き出されました。だから、気づいた瞬間に踏まないようよけるのが精一杯でした。私も同じようなお守りを持っていて、お財布に入れています。そのため、一瞬私のものかな? と目が留まったのです。
駅を後にし、歩きながら考えます。
落ちていた場所から推測するに、定期券を出したときにうっかり落としてしまったのではないでしょうか。正面が少し汚れていましたので、数年間ずっと持ち歩いていたものなのかもしれません。それとも落ちてから汚れてしまったのでしょうか。誰にかに踏まれた、という可能性もあります。きっと、このままだと通り過ぎる足の風にさらわれて、あっちやこっちやにうろうろすることになるでしょう(もうすでに何時間もたっているのかもしれません)。
考えていくうちに、いたたまれない気持ちになりました。
いつも身に付けているお守りだとすれば「身代わりお守り」だと思います。それがぞんざいな扱いをされてしまうのは、落とし主に悪いことが起こりそうでなんだか嫌です(「身代わりお守り」だからこそ、悪いことを代わって受けた、とも考えられますが......)。受験シーズンが終わったばかりで、大学がある駅、お守り......とくると、落とし主の強い願いがこめられているかもしれません。
そうでなくとも、私は、身近なものがなくなることに一種の恐怖みたいなものを感じます。愛用品を失うことは、これまで過ごしてきた時間を失うことのように思えるからです。だから、何か道に落ちていると、心がキュンとします。ハンカチが落ちていたりすると、「この落とし主は、このハンカチをなくしてしまい、その涙をぬぐうハンカチがないんだなぁ」と妙な感傷に浸ってしまいます。金目のものであれば警察に届ければいいのですが、ハンカチや手袋など(落とし主しか気に留めそうにないもの)が落ちていると、どうしようか迷います。落とし主も、交番が目と鼻の先にある場合を除いて、わざわざ紛失届けを出しにいくかわかりません。私なら、来た道を戻って探すだけでしょう。だから、その道の脇に木でもあれば、掛けておく方がかえってわかりやすいのかもしれません。今回の場合は駅構内。落とし主が気づけば、駅員さんに聞く可能性は高いでしょう。
私は、駅に戻り改札が空くのを待って、そのお守りを拾いました。
駅員さんは、ちょうど誰かと話している最中でした。そこに割り込んで「落とし物です」と差し出したお守りに、駅員は、いちべつを投げ「ありがとうございます」とぼそっとつぶやき、すぐ話に戻ってしまいました。正直、このようなものを持ち込まれても困るのかもしれません。保管期間を過ぎたら、どのように対処するか、お守りだけに気を遣いそうです。しかし、ひょっとしたら落とし主が現れて、無事に帰ることができるかもしれません。あるいは、落とし主がまったく気にされない方であればいいなとも思います......。
<リンク>
■ 警視庁:落とし物はどこへ行くの?
お財布に入れているお守り | こんなお守りもあります |
ナビゲートメンバーにお守りをみせてもらいました。 皆いろいろ持っていました。個性的なお守りもありおもしろいです。 |