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入らなかったソファ


[よ] 日常生活

今年、我が家では人生において大きな出来事がいくつか予定されていました。
1つは出産、そしてもう1つは引越しです。

嬉しい反面お金のかかることばかりが続くため、引越しといえどもそうそう新しい家具などを買いそろえるわけにはいきませんが、ソファだけは少しくらい予算を超えても気に入ったものを購入しようと思っていました。
しかし、引越しのころ私は入院中だったため、買い物は後回しにして、主人はとりあえず最低限生活に必要なものだけをダンボールから出して落ち着かない生活をする日々が続きました。

引越しから約3カ月、私が退院し少しずつ片付けて生活も落ち着き、やっと念願のソファを購入することになりました。
何件かの家具屋を見て回り、やっとある家具屋でソファの座り心地や値段を納得、購入することになりました。
そのソファは値段が比較的安いわりに座り心地がよく、人気があるようで、実際に物が届くには1カ月近くかかるとのこと。すでに引越しから3カ月もたってしまい待ちきれない気持ちもやまやまですが、どうせ買うまでこんなに時間が過ぎたのだから、ついでに待とうか......。ということになりました。
このソファはゆったりとした座り心地の大きなタイプだったので、マンション名を告げると、店員は「そのマンションだと、玄関やドアが狭くて入らない可能性がありますね」と言いました。
えー??思ってもない展開。でもそのふかふかした座り心地とお手ごろな値段に引かれていたのであきらめきれません。私たちできちんと玄関やドアのサイズを採寸したところ、店員もそれなら一応入るだろうということだったので注文しました。

それから約1カ月、念願のソファがくる日となりました。その日主人は仕事だったので、部屋のドアなど、あらかじめはずせるところははずし て準備完了!私は掃除をしながら届くのを楽しみに待っていました。
午後に配達ということだったので、午前中に掃除をしていたら「ピンポーン」とチャイムが。もうやってきたようです。大歓迎とばかり玄関を開けると、配送員がいきなり「すいません、ソファを一応下まで持ってきたのですが......。でもお宅の玄関のサイズだと 入りませんね」
「え?でも注文前にこちらできちんとサイズをお知らせして、入るだろうとのことで、購入したのですが」
「販売員は実際の配送の状況をよく把握してなくてね、以前もこのマンションにこの商品を入れようとしたけど無理だったんですよ」とあっさり言うではありませんか!
「もしお客様が納得されなければ、実際に入れてみてもいいですが、どちらにしても無理ですよ。それでも試してみますか?」と淡々と話します。
私は怒りがこみ上げてきました。
注文して1カ月、待ちに待ったというのに、そんな一言で片付けられるなんて!
入らないなら注文するときにそう言ってもらえれば、待っていたこの間にも別のソファを探すことができたのです。さんざん待たせておいて、こんな仕打ちだなんて、許せません。
配送員は「販売員は実際の現場を知らなくて、すみません。」と悪気はない様子です。
彼らはお客から怒られることを覚悟で配送しているのかもしれませんし、これまでそんな場面を何度も経験してきたのかもしれません。その場で配送員に苦情を言うこともできましたが、彼らに言っても解決できないような気がしました。
「わかりました。ソファはキャンセルします」

その家具屋が販売に関してどういう仕組みをとっているのか知りませんが、どうして配送現場の現状を販売員が知らないのか不思議でなりません。
彼らにとってはお互い別の部署で、そのような状況を互いに報告してないのかもしれませんが、客にとっては1つの組織。もしソファがこのマンションには入らない現状を販売員も知っていれば、注文するときにそのことを伝え、別のソファを薦めることができたはず。そして 私たちも納得して別のものを検討できたのです。
しかし、入らないとわかっていたソファを長い間待たされたあと、その店で別のソファを買う気にはなれませんでした。
次の日、支払い済みのお金を返金してもらうため家具屋に行ったのですが、この店に対して失望の気持ちが大きく、販売員にクレームを言う気力もありません。
「こちらの店では販売と配送は別部署で関係ないのかもしれませんが、お互いの現状を共有しておかないと、お客様をなくしますよ」と言って終わりにしました。

その後、別の店でお気に入りのソファを見つけました。
こちらも人気商品で今度は3カ月待ちです。
待ったあげくまた入らなかったらショックなので、前回のものより小さめのものを選びました。今度は必ず入るはず。
なによりその店の販売員は「私はこれまで配送を担当していたので現状はだいたいわかります。そのサイズの玄関だと入るはずですが、もし不安であれば、お宅までサイズを確認しに伺います」と言ってくれました。そこまで言われれば大丈夫でしょう。

今回のことは、部署間で情報の共有ができなかったためにお客をなくしたといえるでしょう。
顧客サービスが重視される中、基本の部分を徹底し改善すれば、お客の満足は普通に満たされ、売上につながり、私たちはとっくに新しいソファでくつろげていたはず。

こんなことがあり、今もなおソファ待ちの我が家です。

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