50円玉の思い出
先日、普段はなかなか手の回らないベッドの下を掃除していたら、50円玉が出てきました。
誰が落としたものかわかりませんが、掃除したご褒美とばかりいただくことにしました。
それと共に、50円玉にまつわる幼い頃の思い出がよぎりました。
確か私がまだ幼稚園くらいだったと思います。
2歳年上の兄と、おもちゃのお金を使って遊んでいたときのことです。
容器の中におもちゃの硬貨をばらばらと入れてあったのですが、いつもどおり中身を取り出そうとしたら、カラフルな硬貨の中に、鈍く銀色に光る本物の50円玉を発見してしまいました。母は隣の部屋にいたのですが、そのときは二人とも「母に知られたらまずい」とでも思ったのでしょうか。何も言わずただ50円玉を見つめていました。その後は子供の相談です。
「どうする?この50円」
「どうしようか......」
「おやつ......」
そんな会話があったと思います。
本来なら母に本物の50円が出てきたことを報告して返すべきなのに、そうではなく勝手に使うことを思いついてしまったのです。
幼い時分ですから子供だけで買い物に行くことなどなく、買い食いなんてもってのほか。
それは大冒険です。
幼い兄妹は大冒険に挑むことを決意し、母には「ちょっと外で遊んでくる」とだけ言って近所のスーパーに行き、50円のお菓子を買いました。
何を買ったのかははっきりと覚えていません。しかし買ったはいいが、今度はどこで食べるかが問題で、母がいるので家で食べるわけにもいかず、結局はスーパーの裏にある空き地で近所の人に見つからないかどきどきしながらそのお菓子を食べたことをぼんやり覚えています。
帰ってからも母はきっと知らないはずなのに、それでも母に対して妙に警戒し言葉に注意してたことを思い出します。今思えば、もしかしたら母はすべてお見通しだったのかもしれません。
今は二人ともそれぞれ家庭があり、たまに会うことさえ難しい状況で、会ってもこれといった話題もないのですが、たまにはこんな思い出話をしてみるのもいいかなと思います。
掃除をしたことで、部屋が綺麗になっただけでなく、少しきゅんとなる懐かしい風景を思い出しました。