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寄り道


[ね] 食・健康

太田和彦、吉田類、なぎら健壱、大竹聡、井上理津子、佐藤和歌子......。

これら諸氏の名前を見て、ピンッ!と来たみなさま。よほどお好きなんですね?(ニヤリ)。

実は今、「大衆酒場」が静かなブームになっています。
上記はそういう大衆酒場に関するガイド本・エッセイの執筆、テレビ番組や講演などを行っている人気作家たちです。

「大衆酒場」といえば......
年季の入った店構え。店先にぶら下がるのは赤ちょうちん(またはのれん)。カウンターの中に接客担当のおかみさんと調理担当のオヤジさん。客席には徳利を並べた年配のおじさんたち。ほどよく酔って少し大きめの声で語るのは、若い頃の武勇伝か、はたまた若者への説教か......。そんなイメージがありませんか?

しかし、最近では大衆酒場を取り扱ったテレビ番組が人気です。安くてうまくて("せんべろ"って言葉はご存知ですか?)、そして人情味のある温かい雰囲気がウケてか意外にも若い人たちが目に付きます。

「一日が終わり家路へ急ぐ人々。ただ何かやり残したような気がして、寄り道したい夜もある。」

これはある酒場を舞台にした人気ドラマの一節です。
仕事が終わって、妻子が待つ自宅(実際には待ってくれてはいない)にまっすぐ帰ればいいはずなのに、なんだかもの足りない気持ち。でも誰かを誘って長話をしたい気分でもない...。
そんな時にちょっと寄り道するのは、いつもの大衆酒場。現代風にいうなら「サードプレイス」(笑)。

(以下妄想)
引き戸をガラッと開け、混んでいる店内へ。「すみません、すみません」と言いながら、居並ぶ先輩方に少しずつ席を詰めてもらい、空いたカウンター席に滑り込む。
できれば最初に頼むのは瓶ビール。なぜなら一人だとどうにも手持ち無沙汰なので、何か「やること」が欲しい。そこで"手酌"という作業をあえて作り出すという上級テクニック。自ら注いだ一杯に、今日の仕事の達成感と疲労感を加えて、ロンリー乾杯。

絶妙なタイミングで「お疲れさま。何にしますか?」というおかみさんの温かい声がかかる。
すかさずメニューも見ずに「モツ煮、ポテサラ(ポテトサラダ)、冷や奴」と答える。この際、礼儀正しく「お願いします」と添えることで好印象を与えようとするこざかしいテクニックを入れる。
そして、できればここには季節の肴を加えたい。そう、自宅ではなかなか作らないような一品を。ホタルイカの酢味噌和え、山菜の天ぷら、焼き秋刀魚、しこいわし刺し...などなど。おっと、冷酒も追加しよう。これも手酌できるようにもちろん徳利である。

席ではそれぞれがリラックスした一人の時間を楽しむ。店内に備え付けられたテレビで、ボーッと野球中継を眺めるもよし。鞄の中から文庫本を取り出して読むのもよし(たいして頭には入ってこないので、後日読み直すのだけれど)。
途中、店員、または常連さんと二言三言会話して会計。この間わずか小一時間。

前述した太田和彦氏はこう言う。良い酒場の条件は「いい酒、いい人、いい肴」である、と。まさにこの店にはそれが揃っているな...。
そして、心地よい酔いと小さな満足感、なにより明日への活力を得て、帰路につく私であった...
(以上、妄想終了)

と、これを書いて、気づけばそろそろ終業時間。さて今日はどこに立ち寄ろうかな。

(日中のお仕事の合間に読まれた方、またお酒を召し上がらない方には失礼しました。)

風景 本
「ただいまー」って吸い込まれそうな灯り。 日々、研究とイメトレを怠らない。
ポテサラ1 ポテサラ2
安定のポテサラ。 お店によってポテサラには大きな違い。
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