入院中:鬼先生とのリハビリ
ウワサによると、私のリハビリの先生はかなり厳しめらしい。私の状態に対して要求レベルが高く、他の先生たちが驚いて2度見することがあります。
例えば、やっと立てた状態のときに、片足で立て、とか。もちろんできっこないのですが、先生の要求には必ず挑戦するようにしてます。私にとっては、そのくらいの刺激でちょうどいいようです。そのほうが面白いし。
しかし1度だけ「さすがに無理」と言ったことがあります。
やっとつかまり歩きができるようになった私に、「杖で歩いてみようか」と言うのです。当然なのだけど、そのためには杖を握れないといけません。それはさすがに不可能です。
すると先生、「そうかあ、無理だよねぇ」と言ったあと、紐を取り出してきて私の手と杖をグルグル巻きにしました。しかし杖がグラグラしてとても体重をかけられたものではありません。
すると今度はバンデージのようなものを取り出してきて、さらにグルグル巻きにしました。
どうしても杖で歩かせないことには気が済まないのでしょう。これには他の先生も「なぜ?」という顔をしてましたが、しかたないので、リクエストに応えて4、5歩歩いてやりました。
そのあと、この練習は一切行われません。これはさすがに、理学療法的にどうなんだろうと疑ってしまいました。
この鬼先生がお休みで他の先生が代わりに担当してくれたことがあります。
人によってだいぶやり方が違うものです。マッサージ中心でとても優しく、おしゃべり上手な先生でしたが、でもなんだか物足りない。やっぱり鬼先生のほうが性にあってるようです。
一昨日、鬼先生が「[の]さん、今度病室から車いすで1人で来てみようか」と言いました。車いすからベッドに移るときも看護師さんの見守りが必要な身です。むろん1人でこいだこともありません。リハビリ室は別の階にあるのでエレベーターを使うことにもなります。
「本当にいいんですか?来ますよ、私」
車いすを使ったことのある人はわかると思いますが、あれをコントロールするには、ハンドルを握れないと難しいのです。しかし、足を上手く使うことで、なんとかカバーできそう。鬼先生と3分だけ練習し、翌日決行することにしました。
車いすのセッティングは看護師さんにしてもらわないといけません。1人で行くと言うと、ちよっと慌てて「本当に先生がそう言ったんですか?大丈夫ですか?」と心配してくれ、結局エレベーターに乗るところまで付いてきてくれました。
初めてのおつかいってきっとこんな気分です。ちよっとドキドキ。どうにか到着すると、「おーほっほー、本当に来たねぇ」と鬼先生。(この人、絶対おもしろがってるな......)
足のリハビリの後に、手のリハビリがあり、作業療法担当の先生に替わります。終了後、「では1人で帰ります。1人で来ましたのでね」と言うと、ちょっと驚ろかれ「[の]さん、それはちょっと無理。土曜日で人も多いしね、エレベーターも込むし、コントロール効かないからね。危ないから今日はお迎えを呼びましょう」
誠にその通りだと思いました。
ヘルパーさんが来て、車いすを押してもらって帰りかけたとき、鬼先生が私を見つけたらしく、背中から声が追いかけてきました。
「[の]さんは1人で帰れます!帰れますからー」と。執念深い人です。私は右手を上げて「ほーい」とこたえましたが、ヘルパーさんはその指示を無視しました。(まぁ、そうでしょう)
そんな鬼先生とのリハビリは、ちょっとスリリングだけど楽しい。
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*約2週間前の状況です。
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