教えたくない店
最近、私の「エンゲル係数」が高くて困っています。食べ歩き、飲み歩きという食い道楽にはまっているためです。
以前は、あまりそんなことはしていなかったのですが、今では「あの店はうまいよ」と勧められると、多少遠くてもわざわざ出かけてしまうほどです。
これは、ある店に友人に連れて行ってもらったことがきっかけになりました。その店を知ってから「もっと他にもうまい店があるはずだ!」と新たな開拓に乗り出したわけです。
今では、その店を気に入りすぎたため、あまり多くの人に知られてほしくありません。
なので「ここぞ」というとき(「[ね]は、なかなかグルメだね!」「[ね]は、いい店知っていてすごいね!」と人に感心されたり、尊敬されたり、褒めてほしいときなど)にしか、紹介しません。
そんな器の小さな私が、今回は自慢を兼ねて、そっとその店を紹介したいと思います。
その店は、魚屋さんが経営している定食屋「U(仮)」で、その日にとれた新鮮な魚介類を出しているという触れ込みです。
細い路地に入った所にあり、目立つ看板があるわけでもないので、表通りからではそんな店があることには気づきません。
しかし夕方5時の開店とともにお客さんが入り始め(「おいおい、夕飯にはまだ早いだろう」と思いきや)、6時には満席、7時には品切れのメニューもでるくらい、意外に隠れた名店のようです。店内は15人程度しか入れないので、休日には行列もできるほどです。
甲殻類(エビ、カニなど)アレルギーの私は、魚介類がそれほど得意ではないので、友人に誘われたときも、あまり乗り気ではありませんでした。どうしても食べられるものが限られてしまうためです。
しかも、定食屋にしては値段も高めだったので、「どれどれ、比較的安いものでも頼んでさっさと帰ろう。あっ、こいつ(友人)は人のおごりだと思ってウニ丼だとっ!?」というケチな了見でメニューを見ていました。
その中で、値段も食材も無難と思われるミックスフライ定食を注文しました。
アジ、カキ、ホタテ、イカという比較的オーソドックスなフライを中心に、魚のフライが何種類か入っています。魚はその日の新鮮なものを出しているので日によって種類が違い、私が最初に行ったときは「メジナ」「ヒラメ」「タチウオ」と、普段フライとしてはなじみのないものでした。
「う?ん、食べたことのない魚だけど平気かな?」という不安と「魚なんてまぁどこも一緒だし、フライにしたら、新鮮さとか関係ないだろう」と、さほど乗り気でない気持ちで、ズズッとお茶をすすりながら料理を待っていました。
しかし、料理が出て来て、[ね]の心に軽い動揺が走りました。
「おぉ、カキとホタテがでかい!?」かなりの大きさです。
そして「どれどれ?」と恐る恐る食べてみると、思わず椅子から転げ落ちそうな驚きを感じました。(すみません、言い過ぎました)
身の柔らかさ、ジューシーさ、そのおいしさに身を震わすほどの感動を覚えました。魚はどれもあっさりしている反面、ホクホクしています。魚介類が苦手な私も「ごっつあんです!」と思わず完食です。
一般においしいと評判の店は、値段の割に量が少なかったりすることも多く(だから余計においしく感じるのかなぁ)、大食いの私にはいささかしっくりこないことが多いのですが、この「U」はボリュームもあります。
また、サイドメニューも豊富で、特に「トコブシの煮付け」は絶品でした。
すっかり満足した私は、気前よくお金を払い(当たり前だ)、すっかりその店のファンになってしまいました。
今では新たな店の開拓と並行して、頻繁に「U」に通っています。
発作的に「Uのミックスフライが食べたい!」と思ってしまうと、いても立ってもいられません。
紹介している今も......。
こうして、いつしかエンゲル係数が高くなってしまう[ね]なのでした。
「素人っぽい盛りつけも、またいい!」 |