5Sのうち「整理」「整頓」「清掃」までがきれいな状態をつくり上げていく活動で、「清潔」「しつけ」はそれをレベルアップし、最少労力で維持できるようにするための改善活動となります。
ここから先は、5Sの各段階の活動について考察していきます。
5Sにはじめて、あるいは改めて本格的に取り組むときには、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」といった5つの段階を切り分けて、1段ずつステップアップしながら進めていきます。
ただし、たとえば整理の段階では清掃はやらないというわけではありません。これらの5つはどれも元々やっている活動ですので、必要なことは続けながら、特定の段階に注力し、1つひとつ完成させていくという進め方をしていきます。逆に1つの段階をクリアして次の段階に進んだあとも、前の段階の活動は継続していきます。
さて、上では5つの段階と書きましたが、活動の中身をみると「整理」「整頓」「清掃」までと、「清潔」「しつけ」とで性格が異なっているのがわかります。前の3つがきれいな状態をつくり上げていく活動で、後の2つはそれを維持するための活動となっています。
そのため、5Sといっても実態のある活動は整理、整頓、清掃まであり、3Sで十分だという考え方もあります。しかし「清潔」と「しつけ」は単に維持するだけの活動とはせず、レベルアップや最少労力で維持できるようにするための改善活動として位置づけることで、より体系的で効率よく、目的とする状態を実現することが可能となります。
5Sでは、最終的に「完全に管理された職場」をつくっていきます。しかし、環境も業務もどんどん変化するなかで、ベストな管理状態を一気につくり上げるのは簡単ではありません。やってみてはじめて気づく不具合や不便さもありますし、維持管理に手間がかかりすぎることもあります。
そこでまず一旦これがいいだろうと思えるきれいな状態をつくっておき、そこから改めて改善を積み重ねていくというステップを踏んでいきます。
その意味では、最初に進める「整理」「整頓」「清掃」までは5Sの助走段階であり、「清潔」と「しつけ」の段階にこそ、5Sの本当の価値があるといえるのかもしれません。
「清潔」と「しつけ」を改善活動と位置づけるということは、「いったんやってしまうけど、あとからもう一度やり直すよ」と宣言していることに他なりません。こう言ってしまうことによって、一度やったら終わりじゃなく、ずっと続けていくんだという意識づけや腹積もりをあらかじめ与えておくことができます。
それだけでなく、こうした位置づけの仕方は、管理者や推進チームのリーダーにパワーを与える効果があります。5Sの基準やルールつくりの過程ではいろいろ意見の対立がおきますが、やらないうちにはどの意見が正しいかのか結論が出ません。しかし、後からもう一度やり直す前提としておくと、ひと通り意見を述べたあとは管理者や推進リーダーに裁定を任せる雰囲気になりやすく、とにかく前進を促す効果が生まれます。
5Sの本当の価値は「清潔」と「しつけ」と書きましたが、「整理」「整頓」は多少の不具合や不便さがあってもやってしまえば、それなりなりに効果を実感することができます。また「清掃」も面倒はあっても一旦きれいになると、汚れやほこりを見つけると気持ち悪く、進んできれいにしようとする人が少なからず出てきます。
そうした状態まで早く進めることがせっかく始めた5S活動を中途半端で終わらせない秘訣でもありますし、頭の3Sと後の2Sで位置づけを分けているねらいでもあります。