問題状況に対する「認識の差」を無くすために、事実情報を中心に現状把握を進めていきます。
ここでは、いろいろなデータや発生した問題の分析結果を提示し、5Sとの関連を確認していきます。
項目 | 内容・例 |
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各種のデータ | ○主な管理指標のデータの数年間の推移 ○事故や品質などのトラブルの発生件数 |
問題の分析結果 | ○トラブルの原因分析の一覧 (5Sが「共通要因」であることを示すもの) |
有効なデータは2種類あります。1つは生産性、コスト、効率、スピードなど主な管理指標のデータで、数年間の推移がわかるとベターです。こちらは上がったり下がったりしていると思いますが、細かく見ると経営のちょっとした動きと連動して変化している場合があります。たとえば人員を削減したあと、品種が増えたあと、設備やプロセスを変更したあとなどに何かの指標が下がっていることがあります。これらは、5Sに代表されるような管理レベルの低さが影響している可能性を示しています。
もう1つは、事故や品質などのトラブルの発生件数に関するデータです。こちらはとにかく現状を確認することが目的ですが、そこで発生している非効率の程度によって、5Sという根本的な活動からやり直す効果が期待できるかどうかの判断材料になります。
問題の分析結果とは、発生したトラブルの原因が何だったかの分析です。事故や品質トラブルは、5Sのレベルが直接原因となっていることは多くはないと思いますが、間接的な要因まで広げていくと5Sの状況が遠因となっていることがよくあります。そのため、複数のトラブルの原因分析を並べてみると、5Sのレベルの低さが「共通要因」として確認でき、5Sに取り組まないとトラブルが無くならないという論理が成り立ちやすくなります。
ここでは、乱れた箇所、汚い場所の写真を撮りまくって見せることが近道です。
項目 | 内容・例 |
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現状写真 | ○自社の乱れた箇所、汚い場所の写真 ○比較対象として、他社・他事業所の好事例の写真 |
5Sができていないと言われる事業所でも、トップがよく通る場所、目に触れる場所、あるいはトップがたまに来るときには、それなりにきれいにしています。ところが、しくみで5Sに取り組んでないところは、トップの部屋や通り道から離れるにつれて乱れがひどくなってきますし、隠れたところ、目に留まらないところにはたくさんの不具合箇所が隠れています。そういうところの写真を撮りまくり、事業所のなかに5Sという観点でたくさん不具合があることを確認することが効果的です。トップの逆鱗に触れたとしても、しかられるのは1回だけですから、思い切って問題を表に出してしまいましょう。
できれば、5Sに取り組んでいる会社や事業所と比較すると、自社がいかにひどいかが一目瞭然となります。見学可能なところがあれば、ダメ元で視察を申し入れてみるのも近道です。
さて、「3.小手先ではレベルアップができないことを確認すること」は次の記事で記述します。
5Sはそれ自体が直接業績向上につながる活動ではなく、最初から組織を挙げて5Sをやろうという意思統一ができていることは稀です。どちらかというと、組織外部から指摘されたり、事故や品質面での問題の原因を探る過程で5Sの問題が認識されたりして、「しぶしぶ」取りかかるというケースが多いようです。これだと活動が本格的に展開されませんし、一時的にやったとしてもほとぼりが冷めるとなし崩しになってしまいます。そのため5S活動を立ち上げるときには、まず会社や事業所の幹部クラスの人たちの間で問題意識を共有し、誰から指摘されたからとかではなく、自分たちの問題として自発的に取り組もう、という雰囲気をつくることが大切となります。それには、誰もが受け入れやすいように、事実情報を中心に現状把握を進めていく方法が一番有効なようです。